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自動車保険の基礎知識

家族限定の自動車保険とは?補償範囲や特約の選び方を解説

車の中で楽しそうに会話をする親子

誤解されやすい「家族」の定義

「家族限定」といっても、実際には保険会社によって「家族」の範囲が異なることがあります。
一般的には、記名被保険者の配偶者、同居の親族(両親・兄弟姉妹など)、および別居している未婚の子が含まれるとされています。
一方で、これらに該当しない人(友人や同居していない既婚の子など)が運転した場合は、補償の対象外となる可能性があるため、「家族」の定義については契約時にしっかり確認しておくことが大切です。

本人、配偶者、同居の親族、別居の未婚の子が対象

家族限定特約を付帯した場合、補償の対象となる被保険者は、本人(記名被保険者)・配偶者・同居の親族・別居の未婚の子です。
このうち、「同居の親族」には、記名被保険者から見て6親等以内の血族と3親等以内の姻族が含まれます。
たとえば、1親等は子どもや父母、2親等は兄弟姉妹や孫、3親等はおじ・おば、甥・姪などが該当します。6親等になると、いとこの孫やはとこなども含まれるため、その範囲はかなり広くなります。
一方、「3親等以内の姻族」には、配偶者の両親(1親等)、祖父母・兄弟姉妹(2親等)、曾祖父母や甥・姪など(3親等)が含まれます。

別居の子どもや親などの適用の有無

別居している親族のうち、補償の対象となるのは、「記名被保険者本人またはその配偶者の未婚の子ども」に限られます。
そのため、別居している両親や兄弟姉妹がお車を運転して事故を起こした場合は、補償の対象外となります。
家族限定特約の適用範囲は保険会社によって多少異なることもあるため、契約前にしっかりと確認することが大切です。

運転者を限定することのメリット

家族限定特約の最大のメリットは、保険料を抑えられることです。
運転者を家族に限定することで、保険会社が補償する対象が絞られ、リスクが減るため、その分保険料が割安になります。
特に、普段運転する人が家族に限られている場合には、この特約を付けることで効率的に保険料の節約が可能です。

家族以外が運転した場合のリスク

家族限定特約の最大の注意点は、家族以外の人が運転した場合には保険の補償が適用されないことです。
たとえば、友人や知人に車を貸し、その人が事故を起こした場合、その事故に対する補償は受けられません。
特に、事故によって相手方に大きな損害を与えた場合は、補償がないことで多額の賠償責任を個人で負うことになり、生活に大きな影響をおよぼすおそれがあります。
誰が運転してもよい状況なのか、誰はダメなのかをしっかり把握し、運転を許可する際には慎重に判断することが重要です。

家族限定特約を選ぶ際の注意点

「本人限定特約」「本人・配偶者限定特約」との違い

「本人限定特約」「本人・配偶者限定特約」「家族限定特約」の主な違いは、運転できる人の範囲にあります。

  • 本人限定特約は、記名被保険者本人のみが運転する場合に適用されます。
  • 本人・配偶者限定特約では、記名被保険者とその配偶者が運転する場合に補償が適用されます。
  • 家族限定特約は、記名被保険者の配偶者、同居の親族(両親・兄弟姉妹など)、そして別居している未婚の子までが対象となります。

家族の中で複数人が車を運転する場合は、「家族限定特約」を選ぶことで補償範囲を広げつつ、保険料も抑えることができます。
一方で、友人や知人など、家族以外の人が運転することが多い場合は、運転者の範囲を限定せずに契約することを検討しましょう。

他車運転危険補償特約の利用

家族以外の人が車を運転する可能性がある場合には、「他車運転危険補償特約」の活用が有効です。
これは、運転者本人が加入している自動車保険から、他人が所有する車を運転中に事故を起こした場合でも補償が受けられる特約です。
たとえば、やむを得ず友人や知人に代わりに運転してもらうような場面では、その人がこの特約に加入しているかを事前に確認しておくことが重要です。
特約がない場合は、別の人に運転を頼むか、タクシーなど他の移動手段を検討するのがあんしんです。

家族限定保険を活用したお得な選び方

運転者の範囲を家族に限定する「家族限定特約」をうまく活用すれば、保険料の節約につながります。
特に、家族の中で複数の人が運転する場合には、この特約が非常に有効です。
ただし、家族以外の人が車を運転する可能性がある場合は、補償の対象外となる恐れがあるため、事前に保険会社に確認しておくことが大切です。

運転者年齢条件特約の活用

「運転者年齢条件特約」を組み合わせることで、保険の適用範囲を特定の年齢層(たとえば21歳以上など)に限定し、保険料をさらに抑えることが可能です。
家族の中に免許を取りたての若年者がいても、その年齢層を補償対象から外すことで、事故リスクと保険料の両方を低減できます。
免許を持っているからといってすぐに自由に運転させるのではなく、運転技術や経験に応じて、無理のない範囲で運転を任せることが大切です。

まとめ

家族限定の自動車保険は、家族間で車を共有するケースにおいて、保険料を抑えつつ効率的に補償を受けられる有効な選択肢です。
ただし、家族以外の人が運転した場合には補償されないため、事前の確認が重要です。

近年では、一部の保険会社で「家族限定特約」を廃止する動きも出てきているため、契約前にどこまでの運転者が補償対象になるのかを必ず確認しましょう。
旅行などで家族以外が運転する可能性がある場合は、誰が運転しても問題ないか、出発前にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

また、別居の親族や友人が運転するケースでは、その方が加入している自動車保険に「他車運転危険補償特約」が付帯されているかどうかも確認しておくとあんしんです。


井上 信一

1967年生まれ。大学卒業後に入社の大手化粧品会社時代に相談業務を手がけたことを契機にFPとなる。以後、独立系FP会社、保険代理店FP部門を通じ、年間約100件の相談、約200時間のセミナー講師業のほか、執筆・監修等にも多数従事、成年後見人として福祉活動もおこなっている。最終的にお客様が選ぶ道は1つでも、「FPの付加価値として別の角度からどれだけサプライズな発想や選択肢を提案でき得るか」を信条としている。


本コラムはファイナンシャルプランナーが最近の自動車保険の動向について注意すべき点をまとめたものであり、詳細は各損害保険会社のホームページやパンフレット等をご確認ください。

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