自動車保険の基礎知識
「もらい事故」の場合でも自動車保険で補償されますか?
もらい事故とはどんな事故?
もらい事故とは、相手の一方的な過失で起きた交通事故であり、自分には責任がない被害事故のことを指します。過失割合が10対0となる事故の一例として以下のようなものがあります。
- 信号待ちなどで、完全に停止している時に後ろなどから追突された事故
- 赤信号を無視した車に、出会い頭に衝突された事故
- センターラインをオーバーされたことが原因で、衝突された事故
最近では、スマホの操作に気を取られた「ながらスマホ」がもらい事故の一因となることもあります。運転中のながらスマホは、交通違反として罰せられますが、現実にはスマホの操作をしている相手から事故をもらってしまうこともあります。自分に過失のない事故とはいえ、運転中は一瞬の油断が重大なもらい事故につながることも認識しておくほうがよいでしょう。
自分に過失のないもらい事故は、相手方のみに過失がありますので、自分のケガの治療費や車の修理代は、相手の自動車保険で補償されます。そのため、自分の自動車保険を使って相手方へ補償したり、治療を受ける必要はありません。
自分に過失がない場合は、自分が加入する自動車保険を使って相手方との示談交渉は行いません。但し、搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険の請求が可能なことがありますので、もらい事故のときも保険会社へは連絡をしておきましょう。
事故後のトラブルは弁護士にご相談を
保険会社は、自動車保険契約中の自動車を主に使用する被保険者が、交通事故により損害賠償の請求を受けた場合に、損害賠償責任の内容や金額を確定させるために折衝や示談、調停や訴訟の手続きの協力や援助を行ないます。
つまり、運転者が一部でも賠償責任を負う場合には、示談交渉を行うことができるわけです。その一方、運転者の過失割合がゼロで、賠償責任がない場合には、保険会社は解決に向けた示談交渉を行えないことになります。
運転者が自分で示談交渉を進められレば問題はありませんが、相手側が保険会社のようなプロである場合、どのように示談交渉を進めてよいか困ることもあります。そのようなケースでは、弁護士に依頼したほうが安心できます。
なお、事故の相手方との交渉を弁護士等に依頼した場合や、事故の解決が訴訟に及んだ場合等には、自分に事故の責任がないとしても弁護士費用を支払うこととなります。そのようなリスクに備えて弁護士費用等補償特約(自動車保険の特約)を付けておくと、自動車事故のときなどにかかる法律相談費用や損害賠償請求費用のうちの一定の金額が補償されます。もらい事故などで相手が任意の自動車保険に加入してなく、相手との直接交渉で示談がなかなか進まない場合などに弁護士費用等補償特約は頼りになります。
補償やサポートの範囲は保険会社により異なりますので保険会社に確認しておきましょう。
ファイナンシャルプランナーによるコメント
事故の相手が無保険だった場合、補償を受けられるのは自賠責保険の範囲内になります。ですが、自賠責保険では、必要な補償を受けられない可能性もあります。そこで、自分が契約する自動車保険に人身傷害補償保険や無保険車傷害特約を付けておけば、治療費などの損害賠償をカバーできます。現実には、自賠責保険にしか入っていない車がたくさん走っていますので、自分の自動車保険(任意保険)の補償内容を見直し、無保険車傷害特約などの必要な特約を付けることが安心につながると思います。

| 監修者 | 畠中 雅子 (はたなか まさこ) |
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| Webサイト | ファイナンシャルプランナー 畠中雅子のミニチュアワールド見学ブログ+観光列車乗車ブログ |
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| プロフィール | ファイナンシャルプランナー(CFP®)。大学時代にフリーライター活動をはじめ、1992年にファイナンシャルプランナーになる。FP資格取得後は、数多くのメディアへの寄稿や監修業務。セミナー、相談業務などを行う。メディアへの掲載、登場回数は1万回を超えている。著書は「70歳からの人生を豊かにするお金の新常識」(高橋書店)ほか、70冊を超える。大学院在学中にソルベンシーマージンに関する論文を執筆したことから、保険分野の仕事も数多く手がけている。 |













