公開日:

火災保険の基礎知識

火災保険は本当に必要?加入のメリットとリスクを徹底解説

火災保険は、自宅や財産を守るための重要な保険ですが、住宅ローンや固定資産税のほかに支払わなくてはならないため、負担が重いと考える人も少なくありません。ですが、家を保有している以上、万が一に備えて火災保険には加入しておく必要があります。本記事では、火災保険に入っておくべき理由を解説していきます。

悩んでいる人

火災の発生状況とリスク

火災は予期せぬタイミングで発生する事故であり、どんなに気を付けていても起こることがありますし、隣家からのもらい火などの可能性もあります。火災はひとたび発生すると、すぐに消火ができたとしても生活を元通りにするまでには時間も労力も必要になります。さらに経済的ダメージだけではなく、精神的ダメージをもたらしてしまいます。

火災の出火原因と発生件数

火事の原因はどんなものが多いでしょうか。以下は消防庁が発表した、令和5年に実際に起きた火災の主な原因です。令和5年の出火の原因は「こんろ」や「たばこ」が上位となり、こんろの火の消し忘れやたばこの不始末が火災の大きな原因となっていることが分かります。

火災による被害額の推移

消防庁の統計によると住宅火災は令和6年に11,232 件あり、令和5年に12,112 件より7%減少しています。被害を受けた家屋や家財の修復には多額の費用がかかります。内閣府が過去(平成29年3月) に発表した統計によると持家世帯の保険・共済の加入割合(建物のみ)では82%の方が火災補償に加入しています。最近では火災保険の需要や加入率が高まっているものの、依然として一定数の方は火災発生時の経済的リスクを無視していることが現状です。特に自宅を火事で失った場合、その再建費用や生活の立て直しには膨大な費用がかかります。

※ 令和6年(1月~12月)における火災の概要(概数)について(令和7年5月30日)

火災保険に未加入の場合のリスク

火災保険に未加入の場合、火災が発生した際に自己負担での修復や再建が必要になります。損害を被った建物を再建するためには、かなりの金額を自己資金で用意する必要があり、経済的だけでなく精神的にも大きなダメージを受けることになります。

未加入で火災が発生した場合の影響

火災が発生した場合、火災保険に加入していなければ、損害を受けた建物の修理や再建費用を自分で負担することになります。その復旧にかかる費用は数千万円に上ることもあり、火災後の生活再建にも多大な時間と費用が必要となります。
自己資金で再建する場合、多くの人が生活の立て直しに非常に長い時間を要することになります。また、保険に未加入で火災などを発生させた場合には近隣への損害賠償にも対応できなくなるなど、自宅の被害に加えて起こり得るリスクに備えることができません。逆に、近隣からの火災により自宅を失った場合にも、再建に必要なお金は自分たちで用意するのが基本となります。

隣家からの燃え移りは賠償してもらえない? 失火責任法とは?

失火責任法は、正式には「失火ノ責任ニ関スル法律」といい、明治32年に定められた法律です。これは「失火(不注意の過失による火災)の場合は、損害賠償はしなくて良い。ただし重大な過失の場合を除く」といった内容が定められています。
そのため、自宅の火災で隣家に火が燃え移ってしまったとしても、「重大な過失」がなければければ隣家への賠償はしなくて良いことになります。
しかし逆に言えば、隣家の火災で自宅が損害を受けたとしても火災の原因が「重大な過失」であったと認められなければ火元の家主からは賠償してもらえない場合がある、ということになります。そのため、生活防衛という点においても火災保険への加入をおすすめします。

無料!火災保険の保険料を比較

火災保険の加入率と世帯別の必要性

火災保険の加入率について

内閣府が過去に公表したデータによると、持ち家世帯の火災保険・共済保険の加入率は全体の82%となっています。そのうち、水災補償を付帯しているのは66%、地震補償を付帯しているのは49%と発表しています。近年では集中豪雨などによる大規模な水害や、頻発する地震に対する備えとして水災補償や地震補償の需要も高まりつつあります。お住まいの周辺地域に災害リスクの高い場所がないか、国や地方公共団体が作成したハザードマップ、浸水想定区域等を確認し補償の付帯についてよく検討しましょう。

※ 内閣府「いざというときに備えて保険・共済に加入しよう」より

物件別の火災保険の必要性(戸建て)

戸建て住宅の場合、火災によって家屋そのものが焼失するリスクが高いため、火災保険への加入は必須と言えるでしょう。加えてご自身の家から火災が発生した場合、失火責任法により延焼した場合でも損害賠償は発生しませんが、それはご自身に重大な過失がない場合に限ります。また、失火責任法によってご自身に賠償責任が生じない場合でもその後の近隣住宅との関係性を考えると何も補償しないというのも難しいものがあるでしょう。そのような時、火災保険に「類焼損害補償特約」といった特約が付加されていれば、自宅の失火によって損害を与えてしまった近隣の方が契約している火災保険で賄えない部分なども補償することができます。

物件別の火災保険の必要性(マンション)

マンションなどの集合住宅でも、戸建て同様に火災が発生した場合には損害を受けた部屋や家財をカバーする必要があります。自室からの出火による消火活動等によって隣室まで水浸しにしてしまったり、逆に近隣の部屋からの火災によって自室に損害を受けた場合などを考えるとマンションでも火災保険の加入は必要です。また、マンションなど集合住宅の場合では自室の水漏れによって階下の部屋に損害を与えてしまった場合などには損害賠償責任が発生します。損害賠償特約は、意図せずに発生してしまった第三者への損害を補償してくれる心強い味方といえるでしょう。

火災保険はなぜ必要なのか

公的支援だけでは不十分な理由

火災被害に遭った場合、多くの自治体では独自の支援制度を設けています。詳細は自治体それぞれで設定をされていますがその内容や金額は生活再建という観点では不十分と言えるでしょう。また、自然災害によって居住する住宅が全壊するなど著しい被害を受けた場合、「被災者生活再建支援制度」によって最大300万円の支援を受けることができる場合があります。ただし、あくまでも自然災害によって住宅に損害を受けた場合に限られており、火災単独では支給対象外となっています。

※ 被災者生活再建支援制度について

火災保険の補償内容

火災や自然災害の補償

火災保険では基本的に火災の他にも落雷や台風・突風・竜巻や雹(ひょう)・大雪などなどの自然災害に伴う損害が主な補償内容補償に含まれます。その他にも、盗難や水濡れ、破損汚損など保険会社によって取り扱う補償の種類は様々です。どこまで補償の対象とするかはお住まいの自治体が出しているハザードマップなどを確認し、身の回りに潜む災害リスクを考慮してて決定しましょう。

ファイナンシャルプランナーによるコメント

火災保険は火災による家屋や家財への損害だけではなく、水災や風災、落雷、雪災、ひょう災などの自然災害によって発生した家屋や家財の損害を補償してくれる保険です。
実際に昨今では、大規模水害による保険金の支払い事故が増えるなど、火災以外の災害が発生した時に、火災保険からの保険金が生活再建を手助けするケースも増えています。
加えて、コンロの火の消し忘れや、たばこの火の不始末のような、日常生活の中で発生するうっかり事故が火災に発展し、火災保険からの保険金を受け取るケースも少なくありません。火災保険は、火災という言葉だけにとどまらないほど、幅広く、家屋廻りの事故を補償してくれているのです。
また、火災保険には損害賠償責任補償が付いているのが一般的で、第三者に対して、予期せぬ損害を負わせてしまったときにも補償が受けられます。日々の暮らしの中で起こり得るさまざまなアクシデントを、火災保険はカバーしてくれています。
お住まいの地域によって、水災や雪災のように災害リスクの発生の可能性や頻度は異なることもありますので、居住地の災害リスクを考慮しつつ、必要な補償が得られているのかを、契約更新ごとにきちんと確認しましょう。

畠中 雅子の写真
監修者 畠中 雅子
(はたなか まさこ)
Webサイト ファイナンシャルプランナー 畠中雅子のミニチュアワールド見学ブログ+観光列車乗車ブログ
SNS Facebook
プロフィール ファイナンシャルプランナー(CFP®)。大学時代にフリーライター活動をはじめ、1992年にファイナンシャルプランナーになる。FP資格取得後は、数多くのメディアへの寄稿や監修業務。セミナー、相談業務などを行う。メディアへの掲載、登場回数は1万回を超えている。著書は「70歳からの人生を豊かにするお金の新常識」(高橋書店)ほか、70冊を超える。大学院在学中にソルベンシーマージンに関する論文を執筆したことから、保険分野の仕事も数多く手がけている。